4月8日のカクテル 「フェニックス・ジン・スリング・浜圭介Var.」

2021年4月8日 木曜日

平成7年(1995)の大晦日夜、

NHKホールで第46回紅白歌合戦が開催された。

紅組司会は上沼恵美子、

対する白組は古舘伊知郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月17日に阪神・淡路大震災が発生したこの年の紅白は、

復興途上の被災地を少しでも元気づけたいという

特別な願いのあるものでした。

紅組

酒井 法子 碧いうさぎ

TRF Overnight Sensation〜時代はあなたに委ねてる〜

長山 洋子 捨てられて

香西 かおり ごむたいな

安室 奈美恵 Chase The Chance

伍代 夏子 北の舟唄

森口 博子 あなたといた時間

森高 千里 二人は恋人

岡本 真夜 TOMORROW

石嶺 聡子 花

DREAMS COME TRUE LOVE LOVE LOVE〜紅白バージョン〜

松田 聖子 ヒット・メドレー

藤 あや子 み・れ・ん

大月 みやこ 夜の雪

中村 美律子 河内おとこ節

田川 寿美 みれん海峡

三船 和子 だんな様

小林 幸子 母ひとり

島倉 千代子 あの頃にとどけ

由紀さおり 安田祥子 ふるさと

田村 直美 ゆずれない願い

坂本 冬美 あばれ太鼓

石川 さゆり 北の女房

都 はるみ 草枕

和田 アキ子 もう一度ふたりで歌いたい

白組

シャ乱Q ズルい女

EAST END×YURI DA・YO・NE

堀内 孝雄 東京発

冠 二郎 まごころ

TOKIO 風になって〜紅白バージョン〜

郷 ひろみ 逢いたくてしかたない

藤井 フミヤ GET UP BOY

SMAP 胸さわぎ'96

小沢 健二 ラブリー

さだ まさし 精霊流し

H Jungle With t WOW WAR TONIGHT〜時には起こせよムーヴメント〜

米米CLUB ヒット・メドレー

谷村 新司 君のそばにいる

吉 幾三 情炎

西城 秀樹 ヤングマン(Y.M.C.A.)

鳥羽 一郎 兄弟船

加門 亮 男の慕情

美川 憲一 幸せになりたい

小林 旭 腕に虹だけ

前川 清 そして神戸

南 こうせつ 上を向いて歩こう

五木 ひろし 酒尽尽

北島 三郎 谷

森 進一 悲しみの器

細川 たかし 望郷じょんから

視聴者からは、

被災地となった神戸の街がモチーフとなっている

『そして、神戸』を大トリにしてほしい

という要望が殺到したそうです。

諸般の事情により(神戸だけが被災地ではないから…?)、

大トリは細川たかしが歌う『望郷じょんから』に決まりましたが、

この年の紅白の最高視聴率をたたき出したのは、

やはり、前川清が『そして、神戸』を歌い上げた時だったそうです。

ところで、『望郷じょんから』も『そして、神戸』も

作曲者は同じ人、…というのは演歌ファンなら周知のことですよね。

 

th5VX9NFX6

 

 

 

 

 (幼少期を過ごした大鰐町)

 

 

その作曲者は浜圭介。

浜は昭和21年4月8日、旧満州の収容所で生まれました。

引き上げ先の青森県大鰐町で幼少期を過ごし、

8歳の時に北海道に移住。

大鰐町で過ごした母との思い出が『望郷じょんから』になり、

札幌での暮らしが、後に北原ミレイの『石狩挽歌』に繋がったと

浜さんは言っています。

昭和38年(1963)、

17才の浜さんは歌手になるために上京。

牧宏次の芸名でデビューしました。

昭和41年には大木賢と改名して再デビューしますが

ヒット曲に恵まれず、

一度は歌手をあきらめ東京を後にしたのです。

浜さんの最初の挫折でした。

img_1[1]

 

 

 

 

 

 

 

故郷の札幌には帰りづらく、

浜さんは幼少期を過ごした青森県大鰐町に近い

青森県弘前市に移り住んだのです。

…あの浜圭介さんが、

なんと弘前市にいたことがあるのですっ!

といっても、この頃私は4~5才なのですが…。

おりしも弘前は名物の桜が満開に、

浜さんはお花見の祭の中で

焼きそばやおでんを売る屋台で働いたそうです。

thLCSVSL0V

 

 

 

 

 

 (弘前の桜祭り)

 

「この頃、人生の厳しさをはじめて知った。

元歌手だという過去も忘れて、屋台の小僧になりきった」

と浜さんは語っています。

ポップスやロック一辺倒だった浜さんは

弘前で酒を覚え、

やがて演歌の心を知ることになったのです。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、弘前の居酒屋で

隣に座った50歳前後の女性客が

浜さんに身の上話を始めたそうです。

「天涯孤独の孤児で、

生きるために嫌なこともやってきた…。」

問わず語りの女性の言葉に、

「自分よりも辛い生き方をしている人はたくさんいる、

自分はまだまだガキだ…」

と浜さんは感じたそうです。

そして、その女性が語った

やるせない人生をモチーフに、

『おんな道』という曲を書き上げたのでした。

『おんな道』 作詞・作曲 浜圭介

生まれた時から みなし子で

親の顔さえ わからずに

夜に生まれて 夜に育った

女の姿

嫌なお客に せがまれて

男の枕に されながら

つくる笑顔も 生きるため

https://youtu.be/JNf0S348Wao

70-04-13-39[1]

 

 

 

 

 

 

 

 (レコードジャケット)

 

 

この曲を抱え、浜さんは再び上京。

昭和44年、浜真二の名で三度目のデビュー、

『おんな道』は30万枚を売るヒット曲になりました。

それから2年。

アメリカの生の音楽に触れる旅に出ていた浜さん。

旅の最後の夜、

窓から眺めたニューヨークの

何とも言えない濃い色の「雨」をみて、

すらすらとメロディーが生まれたそうです。

千家和也さんが曲に合わせて詩を書き、

あの名曲『終着駅』が、誕生したのでした。

『終着駅』 作詞・千家和也 作曲・浜圭介

落ち葉の舞い散る 停車場は

悲しい女 の吹きだまり

だから今日もひとり 明日もひとり

涙を捨てにくる

この終着駅のデモテープを聴いて、

これは自分の新しい方向を

確立してくれる曲だと直感し

自分が歌いたいと

手を挙げたのが奥村チヨさんでした。

奥村さんの直感は見事に当たり

昭和46年12月25日に発売された

『終着駅』はミリオンセラーとなったのです。

https://youtu.be/KR25fJN4I98

その後も、

『そして、神戸』 (内山田洋とクールファイブ)、

『雨』 (三善英史)、

『街の灯り』 (堺正章)

と、浜さんの曲は次々とヒットしました。

そんな中、浜さんの元にひとつの詩が届きました。

なかにし礼さんからの作曲依頼です。

詩のタイトルは『石狩挽歌』。

なかにしさんと浜さん、

旧満州生まれで北海道育ちという、

同じ境遇の二人が出会って生まれた曲は

『ソーラン節』を連想させる壮大な曲となり

北原ミレイさんの代表曲ともなったのです。

https://youtu.be/1xtVGlK2qYA

ところが石狩挽歌以来、

浜さんは曲が書けなくなりました。

スランプです。

浜さんは友人の新聞記者に助けを求めました。

その友人はあらかじめ用意しておいた何作かの詩を

浜さんに見せます。

すると浜さんはある詩に釘付けとなりました。

そして1週間でその詩に曲をつけてしまったのです。

いったん友人のデスクに預かられたその曲は

実に3年間もそのデスクに保管されることになりました。

昭和54年、長い間眠っていたその曲を

八代亜紀さんが歌うことになり

空前のヒット曲となりました。

曲名は『舟歌』。

その翌年、

同じく八代亜紀さんに提供した

『雨の慕情』で

浜さんはついにレコード大賞を受賞するのです。

『舟唄』 作詞・阿久悠 作曲・浜圭介

お酒はぬるめの 燗(かん)がいい

肴(さかな)は あぶったイカでいい

女は 無口なひとがいい

灯りはぼんやり 灯(とも)りゃいい

https://youtu.be/_hO22b2gcYY

自らが若い頃に苦労をしたせいか、

浜さんは、埋もれている歌手を

発掘することにも力を注いでいます。

韓国では桂銀淑さんを発掘し

『大阪暮色』をはじめ、

たくさんの曲をヒットさせました。

また、

18年間ヒットの無かった高山巌さんには、

『心凍らせて』を提供、

高山さん初のヒット曲となります。

th7WG0EMW8

 

 

 

 

 

 

 

浜さんの友人の北原照久さん

(ブリキのおもちゃ博物館館長)は

10代の頃から

浜さんをアニキと慕っていました。

「浜さんは絶対に諦めない、

夢を形にしていく人を間近で見た」

と語っています。

辛い時期を過ごした弘前時代。

『終着駅』、『石狩挽歌』、『舟歌』までの努力。

いつも、浜さんはピンチから蘇ってきました。

そこで今日のカクテルは

不死鳥を意味するカクテル、

「フェニックス・ジン・スリング」を

アレンジします。

どんなピンチからでも、

あきらめずに蘇ってくるという不屈の作曲家。

4月8日は、作曲家・歌手の浜圭介さんが生まれた日です。

 

 

 

 

 

 

スタンダード・カクテルの

フェニックス・ジン・スリングを

少しアレンジして

『圭介・ヴァージョン』にしました。 

Phoenix Gin Sling Keisuke Hama Varsion.

Recipe

Dry Gin ドライ・ジン 40ml
Cherry Brandy チェリー・ブランデー 20ml
Fresh Lemon juice フレッシュ・レモン・ジュース 20ml
Unicum ウニクム 5ml
Fresh pineapple juice 生パインジュース 40ml

材料をシェークしてクラッシュ・アイスを入れたグラスに注ぎ

パイナップル、スライスレモン

マラスキーノ・チェリーをカクテルピンにさして飾る。

季節の花とストローを飾る。