12月16日のカクテル 松山千春/ビシクレッタ

2025年12月16日 火曜日

今日のカクテルはイタリア語で「自転車」の

「ビシクレッタ」。

カンパリ 1/2

白ワイン 1/2

氷を入れたグラスに材料を注ぎ混ぜ合わせる。

レモンピール、

オレンジスライス、

オリーブなど、お好みで…。

どうして松山千春の誕生日のカクテルを

「自転車」にしたのか…。

1955年12月16日、

北海道足寄町で後のシンガーソングライター

松山千春が生まれた。

足寄高校を首席で卒業した千春だが

生後すぐに股関節脱臼で半年間入院した際に

治療費のために両親が多額の借金をしていたことなど

家計のことを考え大学には進学しなかった。

北見市で親戚が経営する料理店で働き、

クラブでバーテンダーもしていた。

やがて足寄に戻り、

父の経営する「とかち新聞社」を手伝いながら

オリジナルの曲を書き溜める日々を過ごす。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして75年、

全国フォーク音楽祭北海道コンクールに

オリジナルソング「旅立ち」で出場した。

ひとりの審査員が

「ギターが良くない」と言ったところ、

「ギターの品評会に来たんでない、

歌はどうなんだ?」と噛みついてしまう。

コンクールには落選したが

この審査員こそが、一目で千春の才能に気付いた

STVラジオのディレクター竹田健二氏。

同局の番組で「千春のひとりうた」というコーナーを設け

毎週ラジオでサテライト・スタジオから千春の生歌を放送すると

リスナーは曲の良さと美しい歌声に惹きつけられた。

スタジオで生の千春を見たファンは、

サングラスに火消し袢纏、

ニッカーボッカーに地下足袋で歌う姿の

曲とのギャップに驚愕する。

じわじわと広がった千春の話題は

小さいながら、やがて全国紙の片隅に掲載されるようになり、

77年、卒業シーズンを迎えた1月25日に、

千春はシングル『旅立ち』で、いよいよデビューするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらが「旅立ち」のレコードジャケットです。

千春の姿はありません。

こんなに美しい声で歌う青年は

どんな顔をしているのだろう?

テレビには出ない、ジャケットにも現れない。

ファンはさぞ、ヤキモキしたことだろう。

千春の顔を知っている北海道のファンだけが

優越感に浸りまくったことは容易に想像がつくのだ。

しかも、ジャケットの一番下に小さな文字で

「このジャケットに、友達の名前を書いてプレゼントして下さい。」

とある…。

やることがイケメンすぎる!

当時イケメンなどという言葉は無かったが

このジャケットで心を鷲掴みにされた中高校生は

SNSなどない時代だから、千春の姿を想像しまくるのである。

もしかしたら顔を出せないくらいにブサイクなのかも…。

そんな不安は、それから5か月後に払拭された。

6月25日に同時発売された2ndシングル「かざぐるま」と

1stアルバム「君のために作った歌」のジャケットに

ついに松山千春がその姿を現したのである。

2ndシングル、かざぐるまのレコードジャケットです。

 

 

 

 

 

 

 

1stアルバム、「君のために作った歌」の

レコードジャケットです。

 

 

 

 

 

 

 

 

イケメンです。

しかも髪が長い。

後に「さだまさし」、「谷村新司」らと共に

『フォーク界御三毛』と頭髪をいじられる面影は

このころはまったく無い。

中島みゆきは御三毛の三人が

揃ってわかめスープを飲んでいるところを目撃している。

このアルバムはオリコン8位になりました。

それからまもなくして、

ニッポン放送から全国ネットで放送されていた

深夜ラジオ番組「オールナイトニッポン第2部」の

パーソナリティーに就任。

いよいよ、人気が全国に拡がっていくのです。

このころの千春の歌には

カタカナや横文字の歌詞が

ほとんどありません。

デビューシングルの「旅立ち」から

7枚目「夜明け」までの14曲の歌詞を見てみましょう。

①枚目 A面・旅立ち=なし

B面・初恋=なし

②枚目 A面・かざぐるま=なし

B面・銀の雨=なし

③枚目 A面・時のいたずら=なし

B面・白い花=アネモネ

④枚目 A面・青春=なし

B面・MY自転車=MY、ニューモデル

⑤枚目 A面・季節の中で=なし

B面・青春Ⅱセカンド=セカンド

⑥枚目 A面・窓=なし

B面・卒業=なし

⑦枚目 A面・夜明け=なし

B面・サイクリング=サイクリング

以上の5個しかありませんでした。

ちなみに千春がデビューする二ヶ月前、

76年11月25日にソロ・デビューした

「御三毛」のひとり「さだまさし」。

 

 

 

 

 

 

 

 

『線香花火』から7枚目『天までとどけ』の

歌詞ではどうでしょう。

①枚目 A面・線香花火=カシオペア、ホタル

B面・指定券=エスカレーター

②枚目 A面・雨やどり=スヌーピー、ハンカチ、キラリン

B面・絵はがき坂=カンナ、シャボン玉、ジーンズ

アンアンノンノ、シャッター

③枚目 A面・吸殻の風景=なし

B面・もうひとつの雨やどり=ドレス

④枚目 A面・案山子=なし

B面・SANDY PARK=SANDY PARK、ベンチ、ブランコ

⑤枚目 A面・桃花源=なし

B面・晩鐘=なし

⑥枚目 A面・檸檬=スクランブル

B面・加速度=スローモーション、コイン、シーソーゲーム

ピリオド、グラス

⑦枚目 A面・天までとどけ=なし

両A面・惜春=なし

以上で合計20個ありました。

千春の4倍の数のカタカナ、横文字が登場します。

「御三毛」もう一人の「谷村新司」はどうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

谷村がいたグループ「アリス」は

デビューから5年ほどヒット曲に恵まれなかった。

ブレイクのきっかけとなる9枚目のシングル

「遠くで汽笛を聞きながら」の発売が

76年9月20日と

千春やさだソロ・デビューの2ヶ月前と

ほぼ同時期なので、

この曲から7枚のシングルを見てみよう。

①枚目 A面・遠くで汽笛を聞きながら=なし

B面・もう2度と・・・=なし

②枚目 A面・さらば青春の時=なし

B面・最後のアンコール=(作詞が矢沢透)

③枚目 A面・冬の稲妻=you’re rolling thunder

B面・街路樹は知っていた=なし

④枚目 A面・涙の誓い=Oh, I love you

B面・何処へ=なし

⑤枚目 A面・ジョニーの子守唄=ジョニー、ホール、コーヒーカップ

B面・センチメンタル・ブルース=take it easy, sentimental blues in the night

⑥枚目 A面・チャンピオン=ガウン、リング、マット、ベンチ

ロッカールーム、ライラライ、チャンピオン、you’re King of King

B面・君よ涙でふりかえれ=なし

⑦枚目 A面・夢去りし街角=なし

B面・逃亡者=オサラバ、ハイウェイ・パトロール、メキシコ

テキーラ、ホラ、シュリト・リンド、ララバイ、グルグル

North of border, Oh Lord, please help me, Hel Angels

以上で合計26個とさだよりも多く、

圧倒的に横文字が多い。

松山千春 5個

さだまさし 20個

谷村新司 26個

千春の歌詞に如何にカタカナや横文字が少ないかがわかる。

さて、79年11月21日。

千春は前出した7枚のシングルのAB両面を収録した

初のベストアルバム「起承転結」をリリースしました。

 

 

 

 

 

 

 

このアルバムは井上陽水の「氷の世界」以来となる

117万枚を超えるミリオンセールスを記録します。

収録曲は12曲でした。

シングル7枚、全14曲のなかで2曲だけカットされたのが

カタカナと横文字を使用していた

「MY自転車」と「サイクリング」。

自転車つながりの2曲だったのです。

後にこの2曲がアルバムに収録されるのは

時代がレコードからCDに移り変わった1996年8月。

「起承転結」から実に17年後の

『ANTHOLOGY 』(アンソロジー )です。

長い間、アルバムに収録されなかったこの2曲。

まさか、カタカナや横文字を使用していたから

カットされたとは思えませんが

不遇の2曲となっていたのです。

そんな中、「ANTHOLOGY」から更に20年後、

「MY自転車」が、日本武道館で脚光を浴びます。

2016年8月8日の、

松山千春 「40周年記念弾き語りライブ」の

オープニング1曲目に歌われたのです。

ライブではこの曲のことを

千春自身が「捨て歌」と自虐的に言っていますが

約40年ぶりに日の目を見たこの曲が

私は大好きです。

不遇のもう1曲「サイクリング」が

いつか輝きを放つことを信じて

今日のカクテルは

「ビシクレッタ」にしたわけであります。

 

さて、私は千春と二人っきりで見つめあった?ことがあります。

1979年9月28日(金)、場所は弘前市民会館でした。

ツアー「失くした心を…」で弘前を訪れた千春が

楽屋口二階の窓から顔をのぞかせたのです。

コンサートの開場時間には少し早かったので

なんとなく楽屋口前にいた私は千春と目が合いました。

びっくりしてフリーズ状態に陥った私は何も言えず

目をそらすこともできません。

千春は黙って私を見ていましたが

数秒で窓から姿を消してしまいました。

今となっては、一言ぐらい話かけていたらと思うんですが

超一流スターの千春のオーラは凄まじいものがあり

田舎の高校生にとっては、それまで見たこともない生き物で

おしっこをちびらなかっただけで上出来でした。