7月18日は、ウィリアム・サッカレーが生まれた日(1811年)
スタンリー・キューブリックが映画化した
「バリー・リンドン」の原作者でもあるが
翻訳本はほとんどなく日本では知る人ぞ知るというところだ
19世紀のイギリス社会では実際の階級や年収よりも
上の階級の人間を気取って真似てみたりする人たちを
「スノップ」と呼んでいた
津軽弁では「えふりこぎ」と呼ばれる方達のことだ
この「スノップ」達を痛烈に批判するのが
サッカレーの小説の特徴だ
ところで
バーテンダーやカクテルの歴史に興味のある人にとっては
サッカレーは歴史上重要な作家である
彼の自伝的要素が強い3部作
それぞれ「ペンデニス」、「ニューカムズ」、「フィリップス」がある
1855年に発表された「ニューカムズ」の中に
「大佐、あなたはブランデーカクテルを、お飲みになりますか?」
というセリフが出てくる
これこそが、「カクテル」という言葉が小説に登場した人類最初の出来事なのだ
この時代の上流階級で「カクテル」が飲まれていたことがわかる
正確な資料は発見されていないので
この「ブランデー・カクテル」がどのような飲み物だったのかは想像するしかない
6月11日のカクテルで紹介した
カール・フォン・リンデによる製氷機の発明は1870年代の事
つまりサッカレーが小説を書いたころは
まだ氷が自由に手に入らない時代で
「ブランデーカクテル」は常温のものであったと考えられる
ここで世界最古のカクテルとされている
「サゼラック」のレシピを参考にしたい
1830年代にニューオーリンズで飲まれていたカクテルです
■サゼラック〔sazerac〕
角砂糖1個と少量の水
45ml ライ・ウイスキー(以前はブランデーを使用していた)
3dash ペイショーズ(Peychaud's)・ビターズ
5~15ml アブサン
調合方法:ビルド(氷は入らない)
グラス: オールドファッションド・グラス
※ベイショーズ・ビターズの代用にはカンパリを、アブサンには
ペルノーにシャルトリューズ・ヴェールを加えたもので代用できる
※
ベースのライ・ウイスキーのところに
(以前はブランデーを使用していた)とある
サゼラックのベースを元々のブランデーに戻したものが
ニューカムズに登場する「ブランデーカクテル」に
近いものだったのではないかと想像はできないでしょうか…
※
今日のカクテルはサッカレーに因んで
歴史上はじめて小説に登場したカクテル
「ブランデー・カクテル」を
推測で再現した「ブランデー・カクテルもどき」にしましょう
Similar to a Brandy cocktail
Recipe
材料 | 分量 |
Cognac Brandy / コニャック・ブランデー | 3/4 |
Pernod / ペルノー | 1/8 |
Chartreuse / シャリュトリューズ | 1/8 |
Campari / カンパリ | 3dush |
Cube Suger / 角砂糖 | 1 |
オールドファッションド・グラスに角砂糖1個と少量の水を入れて砂糖を溶かす
他の材料を注ぎ軽くかき混ぜる
サッカレーの言葉が残されている
※
この浮世は一つの鏡である。
この鏡には皆自分の姿が映る。
だから君が
額に八の字を浮かべて鏡に向かえば、
鏡も八の字を寄せて君を睨み返し、
君が微笑みを浮かべて鏡に対すれば、
鏡も微笑みをもって君に応える。
※
「ブランデーカクテルもどき」のグラスを傾けながら
鏡の中のおのれの顔を眺めてみようか
額の八の字に気が付いた……
※